うえだ歯科クリニック
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むし歯(う蝕症)
むし歯は歯を溶かす病気として知られており、歯周病とともに歯を失う原因のひとつとして考えられております。とくに、20歳台以下の方々にとっては、むし歯の進行は歯の存在を脅かしかねないので、予防を含めて警戒が必要です。
むし歯について、その原因と実態、治療法、予防法などを分けてお話いたします。
1.どんな病気?
なぜむし歯ができるのか
むし歯の実態をご存知でしょうか?
むし歯がどのようにして生じるかご存知でしょうか?
ここでは、むし歯がどのようにしてできるかをお話いたします。
1.むし歯という病気の特徴
・歯が溶ける病気である
むし歯は、硬組織である歯を溶かす病気です。本来頑丈なはずの歯の組織であるエナメル質や象牙質が溶けてしまい、くずれてしまうのがむし歯の特徴です。
歯冠のいちばん外を覆っている組織はエナメル質です。エナメル質はカルシウム、リン酸などでつくられるハイドロキシアパタイトという組織により構成される石灰化組織ですが、むし歯により溶け出していく現象は「脱灰(だっかい)」というふうに表現されます。
むし歯を放置しておくと、どんどん進行してしまい、歯のアタマが溶けてなくなることがあります。
・口の中の細菌により生じる
むし歯をつくる原因はいくつかありますが、その中のひとつが細菌です。口の中にある細菌(ミュータンス菌:Streptococcus mutans)が引き起こす感染症である、という言い方もできるでしょう。
歯周病も口の中のいくつかの微生物が原因となりますが、ふだんから口の中に棲みついている微生物が原因である、という点は共通しております。
2.むし歯を進行させる三つの要因
・歯 ・食物 ・細菌
この三つの要素が絡まったときに、歯は溶け始めます。
むし歯を引き起こすいちばんの原因は歯垢です。歯垢は細菌の塊ですが、細菌が歯のまわりに残ってしまった食物残渣(わかりやすくいえば「食べかす」のこと)を介して増殖していくことにより歯垢が生じます。
ここで、歯垢のpH(ペーハー)が下がり、酸性化していくと、歯垢中に細菌により産生された物質が歯を溶かしていきます。これがむし歯の実態なのです。
3.歯垢のpHについて
では、どんなときに口の中のpHが低くなるのか?
一般的には、飲食後だといわれております。
ふだんのお口の中は何もしていなければ、pHは7弱で、ほとんど中性の状態です。ところが、飲食をすることでpHが下がり、むし歯を引き起こす境界線といわれているpH5より下がります。しかし、唾液のはたらきにより、歯垢のpHは再び上昇し、中性状態になるのです。
朝昼晩三食のみの方は、飲食によるpH低下は一日三回という理屈なります。しかし、間食などで一日に何度も飲食をしている人だとpH低下の機会が増えるので、それだけ「脱灰」の機会が増え、むし歯になるリスクが高まります。
4.むし歯はどんなところにできやすいか?
一般的にいうなら、次の三つです。前歯も奥歯も共通です。
・歯と歯のあいだ
・歯と歯ぐきの境目
・溝(歯のいろんな面に生じている溝・くぼみ)
これは歯垢がたまりやすい場所でもあるので、歯磨きの一般的なポイントということになります。
(注意)知覚過敏はむし歯ではありません!
むし歯でなく歯がしみる現象を総称して「知覚過敏」とよびます。正しくは「象牙質知覚過敏症」といいますが、その原因・応対(処置)の方法はむし歯と異なります。
(参考)
・象牙質知覚過敏症について
2.むし歯の進行について
歯の細菌感染症であるう蝕症(むし歯)について
その進行と症状をイラストを用いて解説します。
1.正常(むし歯になっていない状態)
むし歯菌により歯が溶けていない正常の状態です
2.第一段階(C1):痛みを伴わず、自覚症状のないことが多い
最初は、歯のエナメル質が溶け出してきます。
痛みがないため、自覚症状がないことが多く、穴があいていることや、見た目が悪い(前歯のケース)などで気づくことも。歯医者にて指摘されるケースも少なくないでしょう。
3.第二段階(C2):痛みを伴うことが多い
さらに一歩進んで象牙質が溶け出します。
ここではじめて痛みなどの症状が出ます。冷たいものや熱いものがしみる、などの不快症状が主です。歯の色も黒く変化していることが多いです。進行しているときは、何もしなくても歯が痛むことがあります。
4.第三段階(C3):各段階の中でもっとも痛みが強い!
むし歯が歯髄に達します
さらに進行すると、歯髄中の神経がものすごく痛み出します。このころまでには、熱いものがしみる、冷たいものが激しくしみる、などの激しい症状を自覚するようになります。自発痛といって何もしなくても痛むのはこの段階であることが多いです。また、その歯が原因ながらほかの歯までが痛くなるような感覚に陥ることもありますし、場合により痛む原因となる歯と同じ側で頭痛が生じることもあります(例:左下の歯により、左側で頭痛が生じる)。
歯の色も相当悪くなっております。
5.第四段階(C4):大きく歯がくずれている状態
歯がかなり溶け出し、歯冠が崩壊している状態
根もとだけしか残っていない状態です。わずかに根っこで神経が生き残っていることもありますが、ほとんどのケースで神経は完全に死んでいるといってよいでしょう。冷たいものがしみることはありませんが、たまに熱いものがしみることがあります。
このケースでは、根のまわりで炎症が生じることがあり、そのため歯の奥のほうが痛むという症状が出てくるでしょう。
むし歯といっても上記のように千差万別です。
したがって、その治療方法も異なってくることになります。
3.進行度別の治療方法
むし歯の進行具合により、その治療方法が異なります。
1.第一段階(C1)
むし歯でやられた組織が小さいので、極力むし歯の組織のみを取り除くようにし、そこで穴の開いた部位をその場で埋める方法が主流となります。
2.第二段階(C2)
むし歯でやられた組織がわりと大きいので、溶けていない正常組織も削ることもあります。それだけにC1のときよりも削られて失われる組織が大きいので、つめものがしっかりしている必要があります。また、むし歯が歯髄に近いところまで進行している場合、歯髄症状が治療後に強く出る可能性があるので、そのような症状を防ぐ処置を合わせて行うこともあります。
3.第三段階(C3)
歯髄までむし歯が達してしまう、いわゆる歯髄炎の状態です。歯髄が炎症反応により相当弱っていますので、基本的には歯髄除去が第一選択になります。その後、歯髄があった根の管をきれいにおそうじすることが求められます。
その後、根の治療、土台の治療などを含めて、かぶせものの治療までをきちんと受けて治療が終わることになります。
4.第四段階(C4)
この状態では、根っこでむし歯がどれだけ進行しているかを見極めてからの判断になります。つまり、むし歯の進行がそれほどでなければ、根っこの治療を適切に行って、歯冠を再構築する治療までを受けていただいて歯を残していきます。しかし、相当進んでいる場合は予後不良ということで抜歯を受けていただくことになります。
一応の目安を書いていきました。あとは歯科医師よりその状況についてよく説明を聞いて治療を受けるようにされてください。もちろん、状況などで不明なことがありましたら、質問されてください。
4.むし歯予防について
(どんなことに気をつければいいの?)
さまざまなメディアにてむし歯予防が取り上げられておりますが、
賢明なる皆様にはむし歯の特性を考えて予防につとめていただきたければ幸いです。
以下にむし歯予防の方法を、むし歯の特性から列挙してみたいと思います。
1.プラークコントロール
「むし歯の原因は歯垢(プラーク)である」、この言葉に一切間違いはございません。むし歯の本質は歯質が「酸」で溶けることにありますが、酸がプラーク内から産生されることを考えると、プラーク除去はむし歯予防の王道なのです。こまめにプラークを取り除くことが大切です。
プラークがたまりやすい部位に気をつけて、ていねいなブラッシングを心がけましょう。とくに歯と歯の間、歯と歯ぐきの境目、奥歯の溝、はプラークが溜まりやすい部位として注意しましょう。
2.お口の中のpH(ペーハー)コントロール
お口の中のpHが低いと歯質は溶けやすい傾向にあります。具体的には、エナメル質ではpH5.1以下、象牙質ではpH6.5以下で溶ける傾向にあるといわれます。
そうなると口の中のpHを低くしない(酸性状態にしない)ようにする心がけが必要です。具体的な方法は以下のようになるでしょうか。
(1)食後は早めにお口の手入れをする
一般的な傾向としては食後は口腔内のpHが低下するといわれます。まあほっておいても数時間たてばpHは中性近くにまで戻るのですが、むし歯になりかけの歯には少々つらい環境かもしれません。
そこで、食後まもなく歯みがきをしておくと、低下していたpHが中性近くにまで戻るのでむし歯の発生進行を少しでも抑えられるでしょう。
(2)洗口剤でのうがい
うがい薬の使用もいいでしょう。市販のうがい薬の使用でもかまいません。多くは殺菌作用があるのでプラーク産生抑制につながることでしょう。
意外におすすめなのが「重曹(じゅうそう=炭酸水素ナトリウム)」による洗口です。重曹は酸性に傾いたお口の中を中和してくれる作用があり、プラークから産生された酸のはたらきを抑えてくれます。このことから、うがいなどで用いるとお口の中のpH調整につながり、むし歯予防になるのではないか、と考えられます。
市販の「重曹」です
(3)再石灰化促進剤の使用
最近開発された材料の中には脱灰したエナメル質の表面で再石灰化をひきおこすものがいくつかございます。口腔内のリン酸、カルシウムというイオンを取り込んで、エナメル質の結晶成分であるハイドロキシアパタイトが再構築されるのがねらいです。もちろん口の中のpHも調整してくれます。
おすすめは当院で販売しているキシリトールガムでしょうか。この手のガムの中ではもっとも実績があるといわれております。また、CPP-APPという牛乳由来のたんぱく質を含むMIペーストも歯の再石灰化を促進してくれることでおすすめです。(参考ページへ)
キシリトールガム(歯科専売)です
CPP-ACP配合の「MIペースト」です
3.フッ素の使用
むし歯予防剤として定評のあるのがフッ素です。
フッ素はエナメル質を構成する結晶である「ハイドロキシアパタイト」に取り込まれると、「フッ化アパタイト」というより安定した結晶体に置換されることから、エナメル質が脱灰しにくくなるといわれます。
多くの歯みがきペーストにはフッ素が取り込まれております。これを歯みがきで用いることで多少むし歯予防になるでしょう。
フッ素入りの歯みがきペースト(当院で販売中)
(当院でのフッ素塗布の実施要領)
1.入室前に、歯みがきを行ってください。
2.歯みがきチェックを行います。
3.簡潔にクリーニングを行います。
4.うがいをしていただき、のちに上下歯列にフッ素を塗布いたします。
(注意事項)
1.フッ素塗布後、約1時間は飲み食いされないようにねがいます。
2.同じく、塗布後30分、うがいされないようにねがいます。
3.同じ処置を二度受けてください。
料金(保険外) 単独実施なら2,100円(税込)、PMTCと併行なら1.050円(税込)
5.二次う蝕に気をつけましょう
むし歯は、歯の中に潜んでいることが多いもの。
とくに高頻度で見受けられるのが、以前につめたりかぶせたりした箇所のまわりで、二次的に生じているむし歯です。見た目に明らかに分かるものもありますし、治療の途中で気づくこともあります。「こんなところに潜っていたのか!」と驚くこともあります。
以下にある方の治療経過をご紹介いたします。
症例)Mさん、男性
おもな訴え)左上の冷水痛(いつもじゃないが、たまにしみる)
左上4番(小臼歯)にレジンが充填されてましたが、そこは充填物のまわりで明らかに二次う蝕が認められたので、左上4番から治療に入りました。

パントモ写真から一部切り取り。左上4番および5番の修復物下があやしい…。

左上4番の修復物を撤去した直後の写真。たしかに修復物下で二次う蝕が認められたが…。

その後ろにある、左上5番(小臼歯)でむし歯を発見!手前側に穴があり、まわりが妙に白っぽい(むし歯が深く進行している場合にそう見えることがあります)。左上5番も修復物(金属)撤去に踏み切った。

左上5番の修復物撤去直後。左上4番よりも一段と深い二次う蝕です。とくに遠心(うしろ側)では相当深く、歯髄にまでむし歯が及んでいるかもしれない…。

注意深く2本のう蝕を除去しました。左上5番はやはり相当深かったですが、どうやら歯髄にまではむし歯が達していませんでした。

う蝕除去後は、深くなっているところを補強し、あらかた形を整えてから、型取りになります。この補強処置は「裏層(りそう)」と呼ばれます。
後日、症状確認を行い冷水痛がないことが確認されたので、つめものの型取りに入りました。現在はつめものも入り、冷温水痛などの症状は訴えられておりません。
参考:「裏層(りそう)」について
C2レベルの歯で、むし歯が深く進行して、歯髄に近くなってきた場合、そのままつめものを行うと、つめものの材料そのものや接着剤などの刺激により強烈な歯髄炎を引き起こす可能性がひじょうに高いのです。
そこで、歯髄に刺激が少ないとされているグラスアイオノマーセメントを、むし歯が深くなっているところに対してつめていくと、治療後の冷温水痛が生じる確率がグッと減るのです。
この補強処置で歯の「命綱」ともいえる歯髄を温存できるので、歯を守るたいせつな処置が行われていることになります。